「あのー…
山岡さん何を勘違いしているのか分からないのですが…
あたしは全然ハルの事を何とも思っていません。男としてなんかこれっぽっちも見ていませんから
それに何度も言うようですがわたし達の間に男女の関係というのは一ミリたりともありません」


「けれど、晴人くんは…ッ!」


彼女が何かを言いたげな瞳をして顔を上げたけど、またゆっくりと下を向いていくのだった。


「だってあり得ないでしょう?
あたし、風俗嬢ですよ?
ハルがそういった女性を選ぶような人だとは、あたしは思いません」


わたしの告白に、山岡さんは目を大きく見開いて驚いていた。
余りに大きな瞳を更に大きく開けるもんだから、ぽろっと落ちてしまうのではないか、なんて違う事を考えて何とか気を紛らそうとしていた。
「ごめんなさい…」と山岡さんは小さく呟いた。
そのごめんなさい、とは何に対しての謝罪なのか、わたしに自分の口から風俗嬢だと言わせた事だろうか。
彼女はきっと何となくはわたしの職業に気づいてはいたはずなのだから。


ふと視線を下に向けると、コーヒーカップを持つ山岡さんの華奢な指先がふるふると震えていた。
だからわたしは、その指を自分の指に絡めてぎゅうっと握りしめた。
思ったよりもずっと冷たい指先だった。
わたしは出来る限りの笑顔を作った。涙が零れ落ちてしまわないように