【完】ボクと風俗嬢と琴の音


「身長何センチ?」


右手にビールジョッキ、左手に煙草を持って
少しも表情を揺らさずに言ってきたから
数秒、自分への問いかけなのかと戸惑った。


けれど彼女はジッとこちらを見つめたままで
それが俺への問いだという事にやっと気づけた。


「185センチですけど……」


明らかに俺より年下の女の子に対して、何故敬語になってるんだ!!??


「ふーん。デカ。生活に支障出そう」


「まぁたまに…低い天井のところに頭ぶつけたりするけど……
電車とかでもいかにも邪魔だって目で見られたりもして……」


「デカいはデカいで問題アリだね」


そこでふっと彼女が小さく笑った。
切れ長の目が、線のように細くなって
冷たいイメージが一気に変わっていく。


けれど笑顔を見せたと思ったらすぐに無表情に戻る。


「身長何センチ?」


逆にこっちが聞き返したら、彼女は明らかに不機嫌になったようで


「何その質問。セクハラですけど?」


「せ、セクハラ?!」


「あたしにとって身長何センチ?って質問はおっぱい何カップ?って聞かれるのと同義なくらい
嫌な質問なんだけど?」


「はぁ…スイマセン」


平謝りをしながら、お前だって俺に身長聞いてきただろうが!とは言えない自分の気の弱さを悔やむ。
だからこうやって威圧的な女性には、昔から目の敵にされがちだ。
まぁ女問わずに威圧的な人間からは嫌われがちだけど…さ。