リビングへ入る前に、キッチンから慌てて出てきたハルが手にお玉を持って現れた。
ぽかんと開いた口。
わたしはハルの事を、顔を上げて見上げるの。
見上げるほどデカい男は好きじゃなかった。
けれど、こういうのも悪くないなって思い始めたのはいつからだったのだろう。
「おかえりなさい…」
手にお玉を持ったまま、余りにも真面目な顔をして言うもんだから。
「あーはっはっはっはっはっ」
思わずお腹を抱えて大笑いしてしまったんだよ。
「な、なにが可笑しいのさ」
「だって、お玉持ってさ死にそうな顔してるからさ」
「今ボーっとしながら鍋を見ていたら
琴音がいきなり起きて玄関までダッシュするもんだから」
わたしとハルの間
琴音が行ったり来たりしながら足にすり寄ってくる。
そして、ちょこんと座ったかと思えば澄んだ瞳でわたし達ふたりを見上げるのだ。
ハルが身を縮めて、そーっと琴音を抱き上げて、肩に乗せる。
わたしより目線の高い世界に行った琴音は、こちらへ向かって鈴のような高い声を鳴らす。



