大輝がふっと小さく笑う。
「ちげぇよ。
ああいった男は誰にでも優しいから、そういう男が怒りの感情で自分が見えなくなってしまう時は
大切な物を守りたい時か、大切な人が間違ってる時は道を正したいか、のどちらかだ。
俺は井上晴人じゃないから、あいつの本音の本音なんかは分かんねぇ。
けれど、あいつが琴子を大切に想う気持ちだけは、痛い程伝わる」
ハルが、わたしを?
大切にされてるなんて思った事もなかった。
気が付かないうちに自分を色眼鏡で見てしまっていて
それに囚われてばかりで、大切な事ばかり見落としていたのかもしれない。
大輝が車のエンジンをいきなりかけて、再び猛スピードで走り出すもんだから
体が前へ倒れそうになり、危うくボンネットに頭をぶつけるところだったじゃないか。
「何をするッ!」
「とりあえず帰れ。
お前の望むように関係を壊したくないなら好きにすればいい。
けれどこのままじゃあお互いにしこりが残ってさよならするだけだ。
そんな風に終わるのが1番嫌なんだろ?」



