寂しいんだよ。
何も出来なくたっていいのに。
代わりにするからさ。全部全部引き受ける。
君の出来ないことならば、何でもやってやるから。
だって理由がなきゃ君を引き止められない。




「風俗の、事務所か…」



メモを手に取って独り言を呟いていると
琴音がやって来て、手に持っていたメモにじゃれついていた。
琴子がいない日の琴音は心なしか寂しそうに見えたから、代わりに沢山遊んであげた。



琴子はいつまで風俗嬢を続けるつもりなんだろうか。
琴音は俺の膝の上で寛いでいて、パソコンを開き、今まで調べもしなかった風俗の事を改めて調べてみる事にした。
向き合いたくなかった事実。
何となくは、仕事の内容は分かっているけど、詳細については知ろうともしなかったし、知りたくもなかった。


仕事内容。


もうそこまでスクロールして、嫌気がさしてパソコンを閉じた。
そこに並んでいたのは、ただの文字の羅列。意味なんかもたない。



けれど、実際にここに書き込まれている行為を琴子はしている。
俺の見ず知らずの男、数えきれないほどの男と。
知らない男の汚い手が彼女の体に触れて、彼女はそれに応えるのが仕事。


何も思っていなかった頃はその職業について軽蔑をした事もなかったし、今だって一生懸命生きている琴子を軽蔑なんかしたりしない。
それでも、今は仕事を辞めて欲しかった。決して辞めるとは言いださなかった彼女に
琴音と同じ首輪をつけたとしても、縛り付けておきたかった。
嫌なんだ、その仕事は。そう言いたくなったのは、軽蔑してるからとか汚いと思っているとかじゃなくて、ただ単純に君が好きだったから。


いつだってそれを言う権利なんかないって自分に言い聞かせて
きっと西城さんだったら素直に辞めろって口に出すのだろう。


でも言えない。


見えない男へ嫉妬でどろどろで小さな男だったとしても
それを口に出す勇気さえ持てずにいた。