「それよりも
琴子ちゃんは大丈夫?
わたしがあんな余計な事を言っちゃったから、琴子ちゃんを嫌な気持ちにさせちゃったよね?」


本当に心配そうな顔をして
彼女が俺の顔色を伺うから
根っから嫌な子なんて本当はいなくって
やっぱり山岡さんは素敵な子だと思うんだよ。


「いや、あれは山岡さんは何にも悪くないんだから、気にしないで。
こっちこそ本当にごめんね?逆に嫌な想いさせちゃって…」


「晴人くんは本当に優しい人だよね」


「え?」


「でもわたし…もし自分が晴人くんの彼女だったとしたら
誰にでも優しい晴人くんが少し嫌かも…。
わたしが晴人くんの彼女だったら、わたし以外の女の子に優しくしないでってきっと思っちゃう。
だってその優しさは勘違いしちゃうよ…。もしかしたらわたしにもまだチャンスがあるのかなって…勘違いしちゃう」



計算とかではおそらくなくて
山岡さんは切ない笑顔を浮かべるんだ。


本当の優しさって何だろう。
本当の優しさを持っている人って、普段は冷たくたって、横暴であったとしても
いざという時に大切な相手を思って、守れるような
きっとそれは西城さんのような男だろう。間違っても俺のような情けない男ではない。


劣等感の塊か!


この間まで咲き誇っていた桜はあっという間にひらひらと舞い散っていって
時間が過ぎる儚さを教えてくれる。
散り切ったら道を汚して、人から疎まれる。
綺麗な時は綺麗だともてはやされて、散ってしまえばもう用済みだ、との如く人々に見向きもされずに踏みつけられる。


綺麗も汚いも、裏を返せば同じだったはずなのに。