「あぁ、井上さん、お疲れ様です」
「お疲れさまです。今から休憩?」
「えぇ牛丼屋さんへ」
「ぷ、牛丼とか似合わないね」
「おじさんたちとムサイ店内で食べるのも悪くないよ。
元々牛丼大好きですしー」
山岡さんはあれ以来人が変わったようにさばけた女性になったと思う。
でもこっちの方が全然良い。
彼女がもじもじしながら、何か言いたそうに口を開いた。
「お元気ですか?」
「あ、俺?全然元気だよ。仕事はなんか忙しいけど」
「あなたの事じゃなくて」
「あぁ琴音?この間ウィルス性なんちゃらになって目が腫れてたけど
今は元気にしてる」
「そーじゃなくて!」
山岡さんはこちらへ顔をグイっとのばして、変顔をした。
変顔つったら失礼なのかもしれないけど、眉間に皺を寄せて口元を前へ突き出した。
「一緒に暮らしてる人ですよ」
「あれー?」
俺、山岡さんに琴子と暮らしてるっていったべか?
「佐伯さんと、後ちょー嫌な感じの西城大輝さんの話を繋げていけば何となく分かります。
あの合コンに来てた、派手な感じの子」
「うん、元気だよ。
何か最近料理頑張ってる。
全然上手じゃないけど」
オムライスの皮が綺麗に作れないのーそう嘆いていた顔を思い出して、また笑えた。
好きになると全てが愛しくなるって本当だ。
「彼女さんの手料理って何かいいですね」
「いや、彼女じゃないけど」
「はぁ?!」
山岡さんはさっきよりも変な顔をした。
いっつも上品に笑ってばかりいる人かと思ったけど、こんなにコロコロと表情が変わる人だったのか
見ていて面白くてついつい吹き出してしまう。



