16.晴人「絶望の中に封じた恋心」








「あ~これウィルス性のものですね。結膜炎!
元々体の中に持っているものなんですよ~
予防接種もしているし~大丈夫ですよ~」



動物病院。
優しい先生なのに
猫バックの中に入ったまま、琴音は小さくなって震えていた。
フー、ともシャーとも言わずに、先生に目を合わさずにくるまって震えていた。



「胸の音とかも聞かせてくださいね~
は~い、琴音ちゃんだいじょうぶでちゅよ~?
は~いは~い、他のところは何も異常なさそうですねー
じゃ、目薬だしておきますね」


先生が琴音の目に目薬を垂らしたら「フー!」と威嚇した。


「鼻水も出ていたらこうやって、鼻にもさして大丈夫ですからね~
鼻と目は直結してますからね~」


そう言って、鼻にも同じ点眼薬を垂らす。
鼻に目薬をさすのを見るのはさすがに初めてだったけど



「こっちの白いのさして、5分くらい経ったらこっちのオレンジの方をさしてあげてくださいね~
1日、3回。1週間。それでも良くならなかったらまた来てくださいね~」




琴音は目薬をさされた後も、バックの中でぶるぶると震えていた。
それはそれはこの世の物ではない凌辱を受けたと言わんばかりに震えていた。