「鼻の噛み方よ…ぷ、あはははは」



久しぶりにハルの笑顔を見た。
太陽みたいな、温かい笑顔。
心に暖かいものがある。




お湯で温めたタオルで琴音の左目を温めるハルの横で、その様子を無言で見つめる。

ごめんね。

最近帰ってきたり帰って来なかったりしたからだ。

琴音には関係ない事なのに、辛い想いさせてごめんね?

そしてハルにも謝らないといけない。




「琴子、ごめん…」


そう思っていたら、ハルの方から謝ってきた。


「ここ何週間か、ずっと考えていた。
琴子が俺を避けるようになるのも当たり前だし
それだけ俺は嫌な態度を取っていたと思う。
嫌な言い方をして、本当にごめんなさい……」


ハルがわたしに向かって深く頭を下げる。
その横で琴音が「ニャー…」と小さく鳴いた。


「ハルが悪いわけじゃないんだよ。
実際あたしの中で風俗嬢という劣等感があったから、出てしまった言葉だと思った…。
あたしの方こそ子供みたいに避けたりしてごめんなさい」


「琴子は……!…何も悪くないんだ。
それに風俗嬢の事をどうだこうだ言えるほどの人間じゃない…。
琴子が胸を張ってやっている仕事なら、それはどんな仕事だって尊敬している」