「あァ?!俺はそこまで悪魔じゃねぇぞ。
だからおめーも自分の卒業の事考えとけ。
俺はお前らの心の受け皿にまではなれやしねぇ。
それにお前…
お前にはいるじゃねぇか」
「いる?」
「心の受け皿」
一瞬ハルの事かと思った。
店長はハルの存在を知らないのに。
「大輝はいいやつだって言ってんだろ。
娼婦を救う大企業の社長って
どっかの悪趣味な映画みたいだな」
あの映画好きよ。
ハルも言っていた。
琴子と西城さんみたいだねって。
でも違うの。
わたしが欲しかった物はそんな物じゃなくて
もっと小さな物で良い。
猫とあなたの、どこにでもあるような日常。それだけで良い。
でもそれは叶えられない夢なので
「おい、携帯鳴ってんぞ」
叶えられない夢ならば、それを諦められるような強さが欲しい。
「はーい、もしもしーどうしたの~?」
「どうしたのじゃないってばぁーあんた今どこ?」
電話はユカリからの物だった。
ホストに行こうって誘っても断られた、ユカリ。
当たり前か、優弥くんがいるんだもの。
「今はー…事務所…」
「リップスの事務所?
今仕事中?」
「仕事じゃないよん。今日は事務所に泊まろっかなぁーって思って」
「最近家に帰ってないの?」
「それはー帰ったり帰らなかったり」
「もぉー…あんたぁ…何やってんのよぉ…」
電話口で、ユカリが呆れながら話し出した。



