「その通りデス。
ボクはきちんと響先輩を見習って
ブスでもデブでもお店に金を落としてくれるのであれば、好みでない女性でも
抱かなくてはいけないのデス。
それでもボクはこの仕事が好きで、嫌いになりたくはないので
自分の好きな事しかしたくないのデス」


「ホストやめろ。
風俗嬢も頑張ってんぞ。
人から軽蔑されながらも、汚い男の欲望にまみれながらも
頑張ってんぞー?

そして
あなたはいくらホストに向いていないとしても
汚い男の欲望にまみれた汚い私の体を抱ける
そんなあなたは素晴らしい人だと思う」




楓はわたしを抱くときよりもずっと優しい顔をしていたと思う。
ベッドに座り込む劣等感の塊のような女を抱きしめて、頭をぽんぽんと何回か撫でた。




「琴子は汚くないよ」


「口、巧いの」


「ホストですから。
いくら向かなくたって、この仕事が好きですから

琴子は自分の仕事、好き?」





好きなわけないじゃんかよ。
誰が好き好んでこの仕事をしていると思っている。

でもそれでも良いんだって思ってた。
誰から蔑まれようが、疎まれようと、わたしはわたしだって
生きていくのには、金が必要で、人の汚さを知って、自分の汚さを知る事を
傷みさえも飲み込んで豪快に笑えるのならば、わたしはきっと不幸なんかではないと
誰にもわたしを不幸には出来ない。
ずっとそう思っていたよ。あなたに出会うまでは。