けれど

あなたは優しい人だから、きっと苦しんでいる。
きっと後悔をしていて、わたしを傷つけた事を理解していて
ずっとずっと苦しんでいる。
軽いノリで「全然いいよ~」とか言えたら良かったのに
あの物語のヒロインのように何でもないって顔をして、豪快に笑って見せるって決めていたのに…。

全然笑えなかった。
あんな感情をむき出しにして
きっと風俗嬢でいる事で自分に1番コンプレックスを感じていたのは誰でもなく

わたし自身だ。






「琴子ー…」


「あー…ゴメン、何?」


目の前の楓はやっぱり犬みたいな人懐っこい笑顔で笑うから。


「なんかやる気なくなっちゃったぁー
久しぶりだったから楽しいかと思ったけど、今の琴子見ていたら何も楽しめなさそう」



楓はシャツを着て
よいしょっとって言いながらベッドから立ち上がった。

そしてこちらを向いて悪戯な笑みを浮かべた。



「ボクはー枕ホストですっ」


「ハハ、何それ。自分で言う?」


「しかもたちの悪い事に
趣味枕なので、いくら君のよーな細客でも
自分のタイプの子しか抱きません」


「それ威張って言う事?仕事であるのならば、どんな事をするホストでもあらねばなりません」