15.琴子「誰もが綺麗になど生きれない」







あぁ下らない。
わたしのしている事なんて
きっと下らない事だ。


「どーしたの、琴子ぉー」



ここはラブホテル。
目の前には子犬のようなつぶらな瞳を向ける楓。

ここ数日
家に帰ったり、帰らなかったり
帰っても極力ハルと顔を合わせない時間を選び
帰らない日は朝までホストで飲んだり、漫画喫茶で朝を迎えたり
カプセルホテルに泊まったり、なんてね。



「最近さーほんっと琴子全然お店にきてくれないんだもん。
ユカリちゃんも来てくれなくて、響さんだって寂しがっているよぉ~」


そう言いながら、楓はわたしの服を脱がそうとしてくる。


「ふぅ~ん」


「あ、何か琴子冷たいのー」



下らない
下らない
下らない
どうでもいい。

目の前の楓が、チュッと口先だけで猫みたいなキスをする。
琴音がわたしにしてくれるような、可愛いキスをする。

誰とだってヤルのは平気だった。
キスなんてお客さんといくらでもするし
本番はしないけど
それに近い事をしているのは事実で
だからハルがわたしを汚いと感じる事は全然悪い事ではなくて
当然の報いだ。今まで自分がしてきた事の。