今日の月は、雲にかくれておぼろげにしか見えなくて
だから、また切なくなる。
彼女に会いたくなる。

プライドも高い自分には、どう彼女に伝えていいのかも分からないんだ。



「晴人くんの好きな子って…あの合コンに来ていた女の子なんだ」


「いやぁ…そのぉ…」


「いいなぁー…」


「え?」


「晴人くんにそんな風に思ってもらえる子、いいなぁ~って
わたしあんなに怒った晴人くんを見た事はなかったし。

あ、でもわたしは友達です。
だから今日も友達として心配で待っていました」




山岡さんの真っ白な手は真っ赤に染めあがっていた。
俺って本当に情けない男だな。



「ちなみにあの西城大輝という男は晴人くんも友達のよぉーですが
社長ばかりの飲み会の時に出会いました。
西城グループの御曹司っつー事で狙っていたんですが、きっぱりとタイプではないと断られました。
自分は何人もの男と付き合える女より、1人とずっと付き合える女がタイプだとかなんとか言われて
むかついて死ねとか思いましたけど、今にして思えば図星だったのかもしれません」


「あはは、やっぱり山岡さんはそういう感じの方がいいよ」


「言ってしまえばいいのに」


「え?」



駅前の人並みの中で

山岡さんがくるりとこちらを振り返る。

花のような笑顔。

でも前よりどこか毒をはらんでいて

儚なさの中に強さがある。




「きっと、あなたの好きな人は…わたしみたいなタイプじゃなくて
1人をずっと大切に出来るような素敵な女性だと思うから。

そんな人は純粋で優しいあなたとお似合いだと思うから気持ちを伝えてしまえばいいのに」