「別に、元々わたしはこんなタイプですし
実はワインなんてこじゃれた物より、ビールの方が好きですし?」


「え?俺もだよ?
何で言ってくれなかったの?」


「何でって、あなたが素敵なワインバーがあるからなんて言うから。
わたしはワインが好きだなんてひっとことも言ってませんが?」


不機嫌な顔。
全然悪くないって思った。

一瞬ぴたりと互いに動きが止まって
そして顔を見合わせて大笑いした。


「な~にやってんだか」


「ほんとっばっかみたい」


上辺だけしか見えていなかったと言うのだろうか。
それは、お互い様か。


「晴人くん、港区女子って知ってる?」


「港区?何それ」


「わたしってじつーはすごく嫌な女なんです。
夜な夜な業界関係者とかと飲み歩いて出会いを探しているような
そしてお洒落なお店に行って、高級ブランドをプレゼントしてもらって
SNSに日々投稿して、女同士で下らないマウントを取り合うような
そしてそんな下らない事で優越感を得ているような

そう。わたしは実はそんな嫌な馬鹿女なのです」



きっぱりと言い切って、再びビールを一気した。
その開き直りは、何だか笑えて、前の山岡さんよりずっと喋りやすいと思った。


「わたしは!」



そう言って、彼女はバックの中からペンケースを取り出す
そのチャームにはいつかあげたたこ焼きキーホルダーがついていた。



「このような品物は趣味ではありません。
もらった時一瞬ギャグかと思いましたが
あなたが余りにもキラキラした瞳をわたしへ向け
可愛いでしょう?と真剣に言ってくるものですから
ぜっんぜん可愛くない、とは言えなくなりました」


「あははははははは」