彼女が来たいと言ったホテルの最上階のレストラン。
海が一望できる、ロマンチックなレストラン。最高に、文句のつけようのないクリスマス…だった。





「素敵」


白ワインを口にしながら、彼女は外の風景を見てそう言った。
ガラスに反射して、彼女の瞳がキラキラと光っていた。

それなのに、俺は腕時計で時間を気にしてばかりだった。
好きでもない白ワインは味がよく分からなくて、何て切り出せばいいか分からなかった。


「晴人くん、ありがとう。
このお店の予約取るの大変だったでしょう?」


「いやあ、まぁ…」


「本当に今日は楽しかった。
晴人くんとクリスマス一緒に過ごせて良かった…」




彼女は微笑む。
その笑顔にだって1ミリの狂いはない。
けれど俺は愛想笑いをするだけで、正直今日1日楽しめなかった。


彼女と過ごすクリスマスよりも
家でひとりぼっちで誕生日を迎えている琴子が気になって
でもそんな心配はご無用だって、彼女ならきっと笑う。
ひとりではない、琴音がいてくれるって、笑い飛ばす。
あの明るい笑顔が、俺にはどうしても切なくて悲しくて、どうしようもなく気になってしまうんだ。