「えぇ~あたしこんな美人~?ハルの目にはあたしがこーいうふーに見えてるのねぇー」


「いや顔じゃない」


「分かってるっつの!
こんな美しい人が娼婦って事さえ現実感なさすぎるし
だから映画っていいんだしぃ~
ジュリアロバーツがブスだったらキアヌリーブスは家へ帰すよ」


「でも似てる。
俺こういう笑い方する人大好き。
こうやって嬉しそうにいーって口を横いっぱいに広げて笑う人
大好き」


琴子がイーっと口を横いっぱい広げて俺の方を見た。

「はは、何だそれ」


「しっかし映画だねぇ~実際ありえねぇってこんな事~~~」



……………。



「なんか」


「ん~?」


「西城さんと琴子みたい」




彼女の横顔は無表情で黙ったままだった。


ふたりが主役である物語なのであれば
俺は、あの悪役Aか?
いやいやそんなところまで来れちゃいない。
ただの知人Bだろうか。
いや…名もなき通行人のひとりに過ぎなかったか。


琴子にとって俺はただの名前も知らない通り過ぎるだけの、通行人 Cもつける価値さえない。