「彼女は僕の愛撫に小さく可愛い声を出して
自分からキスをせがんで
僕の背中に爪を立てながら抱き着いてきて
僕は彼女の体中にキスをしました。
柔らかい肌。裸で抱きしめ合って、彼女は確かに僕を求めていました」
吐き気がする。
まるで大切にしていたパズルが一気にバラバラに壊されたように
床に叩きつけられて、大きな音を立てて崩れ落ちて行く。
俺は、肩にかかる西城さんの手を強く振りほどいた。
「止めろ!聞きたくない」
「挿入しようとした時 僕は言いました。
井上、晴人と君の名前を
そうしたら、僕の目をずっと見つめていた彼女が目を逸らしました」
俺の名を?
振りほどいたはずの手
両手で俺の肩を掴んで、それは痛いくらいの力で
顔を目の前まで持ってきて
あの鋭い瞳で
まるで憎い物を見つめるような目で
「お前にそのつもりがないのなら
今すぐあの子から離れろ。
お前はあの子を縛り続けて、傷つけている。
俺ならば、そんな事は絶対させない」
ポンっと軽く肩を叩いて
西城さんはすぐに作り笑顔に戻った。
「では、失礼しました。
お仕事頑張ってください。
一流企業の営業さんなんですから、あなたと一緒にいたい女性は星の数ほどいらっしゃるでしょう?
たとえば、あそこでハラハラしながらこちらを伺っている女性、とかね」



