「それに風俗嬢だし…嫌だろ普通。辞めたとしても過去は消せないんだよ」
「誰よりも風俗嬢って事を気にしてるのは俺じゃなくてお前の方だろ。
負い目を背負ってんのは、自分自身だろが。
それこそお前のいう呪いって奴だよ。
風俗嬢は恋愛する資格がないとか思っちゃってるんだろ」
車は、どんどんとマンションへ近くなってくる。
「大輝、もうここでいい…」
「うるせぇ家まで送る。
マンションを教えないってならこのまま帰さない」
なんつー自己中な事を
「ここだよ!ここ!
つーか早くおろして!」
ハッキリ物事をいうこの人の前で
自分が隠してきた本当の自分が
真っ裸にされそうな気がして
怖かった。
裸で知らない人と抱き合う事より
ずっと怖かった。
マンション前まで着いて、やっと帰れると胸をなでおろした時
前から歩いてくる人影に気が付いた。
遠目から見ても分かる、大きなシルエット。
わたしはハルの、優しく笑う顔を見ると嬉しかった。
だからハルにはどんな時も笑っていてほしかった。
特別なんかじゃない
誰にでも見せるあの笑顔……
助手席のドアに手を掛けた時
それが乱暴に遮られて
大輝はわたしの頭を掴んで、深いキスを落とした。
やっぱり強姦野郎か?!
いやだいやだと抵抗すればするほど、車の柔らかいシートに体が沈んでいく。
息も出来ないほど、深いキスだった。
助けて!
そう思った瞬間、助手席の扉は乱暴に開けられた。
「琴子?!」
月明かりに照らされたハルの顔は
全然笑っていなかった。
あんなに一緒にいたのに、それは初めて見せる表情だった。



