「心臓が物凄い速さでドキドキと言っているのですが?」
「ソープ嬢になんか絶対させない。
ソープ嬢になったら絶対に許さない」
「や、なるつもりなんかもないけど
でもセックスがしたいのなら、ソープ嬢になるしかないから
これは交渉決裂と言ったところでよろしいか?」
「これは交渉じゃない。
俺の望みだ」
「大輝ー…
今まであたしに使ったお金を使えばモデル級の子がいる高級ソープにも行けるよ?
てゆーかお金で女なんか買わなくたって大輝の周りには沢山女の子がいるでしょ」
大輝はわたしの身体に顔を埋めたまま小さく呟いた。
「やだ、琴子がいい…」
何だ、これ。
駄々っ子かよ。段々イライラしてきた。
「我儘ばっかり言わないで」
顔を上げてこちらを向いた大輝。
びっくりした事に大輝は顔を真っ赤にさせていた。
耳まで真っ赤で、額にうっすら汗をかいている。
「気づけよっ!
この鈍感女ッ!」
もしかして…
これってもしかして…
いやありえないよ。
自意識過剰かって
少女漫画かって
ご都合主義かって
でも真っ赤になってわたしを抱きしめた大輝の腕
少しだけ震えていた。
出会って数か月。
最初は最悪な出会いだったけど、それから何度も大輝はわたしを呼んでくれた。
金持ちのお金の使い方なんて知らない。



