「大輝は遊んでる女は沢山いるよ。彼女らしい人だってちらほらあたしに話してくるし
飽きたらすぐに切れるって。
デリヘルに来るお客さんってのは本当に色々な人がいるからねぇー

あー琴音ぇー?どおしたぁー?」



キャットタワーに登って寝ていたはずの琴音はいつの間にかそこから降りていて
琴子の寝転んだ背中の上に乗って、ジーっと俺を見つめてきた。
全部を見透かしたような瞳で
手を差し出すと、ゴロっと喉を鳴らして指にすり寄ってきた。



西城大輝。27歳。
西城グループの御曹司。
エスカレーター式のお坊ちゃま学校を卒業。のちに父親の会社に入社。
短い黒髪で、鋭い目つきで、スーツがよく似合う。いかにも仕事の出来そうな人間。



それが俺の知ってる限りの情報。
経済紙で見ただけの、ただの文字に起こされた情報と、雑誌に掲載されていたモデルのような容姿。



床に置いていた携帯がメッセージを受信する。

琴子は携帯を握りしめたままうとうととし始めて
その背中に乗った琴音も、安心したかのような幸せそうな顔で目を閉じる。



「今日はありがとございました!
あのお店は当たりだったね(*'ω'*)
北海道の話を聞いて、いつか旅行でもいいから冬の北海道に行ってみたいなぁーって思いました('ω')ノ

ところでどこに行きたいかって話なんですが
水族館とかはどうかな?
晴人くんは動物が好きみたいだし(水族館は魚ですが。笑)

月曜日会社で会えるの楽しみにしています~( *´艸`)」



内容は、頭には余り入ってこなかった。
水族館、きっと楽しいだろうな。
私服姿の山岡さんも楽しみだ。
本当に楽しみだったんだ。



けれど、心の中に靄がかかっているみたいに
その嬉しい出来事にさえ集中出来なくて
目の前のまどろみの中にいる琴子を見つめながら、俺は何も言えずにただ彼女を見つめるだけだった。