正直
この手の店は苦手だった。
けれど、目の前にいる彼女が素敵な笑顔を見せてくれるのならば
そんな事はどうだっていいという気分にもなる。




「寒いよー何もないし」


「でも雪とかって憧れ。
ホワイトクリスマスとか素敵…」


ホワイトクリスマス、か。
18年間雪国で育ってきたら、クリスマスに雪が降るのは当たり前で
逆に降らない事が不思議に思ったりもした。



「でも道民は改めて雪とか見ないからなぁー」


「晴人くんは、冬が似合うよね」



晴人くん、と俺の名前を呼び彼女は笑う。
互いの呼び名を下の名前にしようと提案したのは山岡さんの方で
けれど、それから俺は一度も彼女を美麗ちゃんとは呼ぶ事が出来なかった。



「そうかなぁー」


「うん、すごく。
あ、これ美味しい」



今日は山岡さんが来たかったって言うイタリアン創作レストラン。
彼女はパスタを口に運びながら、嬉しそうに言う。


「ほんと、美味しいね」


「晴人くんとは趣味が合って良かったぁ」



いや、合ってないけどね。
けれど周りの羨望の瞳。
美しい彼女を前にして食べる、好みではない料理。
お腹いっぱいだし、胸もいっぱい。



彼女が笑うたびに、ぶら下がっている華奢なピアスが揺れる。