そっと琴子の体に手をかける。
相変わらず軽ッ……。
起こさないように、ゆっくりと部屋へ運ぶ。
琴子の体から煙草と香水と、そして微かに石鹸の匂い。



お風呂上がりの匂いをこんなに切なく感じてしまうのは、初めてだった…。



布団の上におろして、首元まで布団を掛けてやったら「うー…」と小さな唸り声が聞こえてきた。
「うん?」起きてしまったかと彼女の顔に自分の顔を近づけると、両手がぐいっと首元に回されて
その拍子に布団の中へ倒れ込む。




!!!!



ひとつの布団の中で
琴子に抱きしめられた形になる。
びっくりして顔を向けると、小さな寝息を立てながら。彼女は眠っている。

細い腕が、首元に絡まって
息がかかるくらい近づいた顔。
目を閉じてる彼女の睫毛の下がマスカラで少し黒くなっている。
あどけない寝顔。




彼女を女なんて、意識した事がない。



けれど
掴まれた首がぐいっと引き寄せられて
その拍子に軽く唇と唇が重なった。


と思ったらすぐに手の力が抜けて
琴子は小さな寝息を再び立て始める。



布団を直して、すぐに部屋から飛び出した。
洗面所に行って、水で顔を洗う。
鏡に映った自分と目が合った。…顔が赤くなっている。心臓もバクバクと鼓動を刻んでいて
思わず自分の顔を手で覆ってしまった。