「でね、その客ってやつが!!
ハルの持ってた雑誌に出ていた人だったよ!」
「雑誌?一体何の話だ?」
「だーからハルが読んでる小難しそうな経済紙に出てた!
西城グループの御曹司で、西城大輝って男!
実物すごくかっこよかったよ!!」
「お前……
仕事には守秘義務ってのがあってだな…。
つーか琴子のお店ってそんな有名人が客としてやってくるのか…?」
「いや全然普通の人ばかりだよ。
何か西城大輝は店長と知り合いらしい」
「そか。
ふーーーーー、てか、何事もなくって良かったよ。
はぁ、安心した」
心配して、慌てて電話をしてくれた。
その事実だけで心がポッと明るくなってしまう。
やっぱりいい奴じゃん!!!
「いま、外?」
「うん、ホテルまで歩いている」
「お月さま!!!出てる?!」
「あぁ、そういえば。
満月だなぁー…」
「琴音は元気いっぱいだよぉ!!
でもハルがいなくて寂しそう…」
「そっかぁー…会いたいなぁ…。」
やっぱりハルは女の子を幸せに出来る人だと思う。
ハルに想われる女の子は絶対に幸せ。
ぽっかりとまんまるな満月。
離れていても、同じ景色を見ている。
こんなに自分を心配してくれる他人がいるなんて。
もう他人には思えなくなっていたんだよ。
友達以上、家族未満みたいな存在で
いつの日か
1日1日あなたの存在が大きくなっていくなんて
この頃は考えはしなかったのに。