「高校時代に付き合った元カノに…」


「あー…ハルが唯一付き合った女の子かぁ」


「ひとつ年上の先輩だったんだけどね。
学校のマドンナ的存在で
女の子らしい見た目をしてて、誰からも好かれててさ。
でも付き合って性格を知っていくと、物事をはっきりと言う人で
あっけらかんとした明るさがあって…素敵な人だった…」


「何で振られたの?」


「何考えてるか分かんないって言われた…。
今よりずっと口下手だったし、感情表現も豊かじゃなかったから
別れようって言われた時もはいとしか言えなくて…
本当は嫌だったんだけど…」


「ふぅーん…。甘酸っぱい話ねぇ…」


「ちょっと馬鹿にしたろ?」


「いえいえ~!とても素敵な話を聞かせてもらいましたよぉ~!
まぁ学生時代の恋愛ってそういうもんじゃん!」


「そんでさ…これは引かないで聞いてほしいんだけど」


「はい?」



ジッと琴音の姿を見る。

琴音はネズミの玩具とひとり格闘中。

そんな姿も愛らしい。



「実は…琴音って名前
その元カノの名前なんだよね…」


スプーンを握りしめたまんま、琴子が下を向く。
肩は僅かに震えている。
…こいつ、絶対に笑っている。