身長差、30センチ以上か。
首を大きく伸ばして、俺へと一生懸命背を伸ばす彼女は
真面目な顔をして、こちらへ指をさした。



「特にあなたみたいな真面目そうな人は食い物ににされちゃうの。
それが大都会、東京」

余りに大真面目な顔をして言うもんだから
ふっと笑いが吹き出してしまった。


「肝に銘じておきます。
でも本当の詐欺師は最初からそうやってネタばらしはしないだろ」


「確かに。てゆーかハルを見上げると首が疲れる~」




夕焼けに染まる横顔。
すっぴんになった彼女は子供みたいに幼くって。



何故か信用出来た。
もうそれこそ直感というしかないんだろうけど。
そして普段の自分なら、こんな提案をしていなかったし



そういうならば、全て仕組まれた偶然としか思えない。
琴子に出会えた事も
一緒に暮らすようになった事も
出会ったばかりなのに俺の為に本気で怒ってくれたり、ゲロ吐いて自分の弱みを飾らずに見せたり



それはただの偶然。
でも君でなければ、俺は一緒に暮らそうなんて言っていなかったと思う。



だから今考えても俺のあの日の選択は、間違っているとは思えないんだ。