もったいねぇ。

そう思いながらハサミを動かす。

さく、さく。

もちろん髪を切るためのハサミではないけれど、切れ味は悪くない。

長い髪が下に敷いた新聞紙の上に、ばらりと落ちていく。

切られている本人は時たまにくすぐったそうに笑う。

そういえば昔、俺じゃない誰かにコイツが言っていた髪を伸ばしていた理由。

「人に髪を触られるのは、あんまり好きじゃない」

そうそう美容院に行かなくてもいいように伸ばしていると。