結局、無力なあたしは何も出来なかったけれど。

あたしは今、サナにたいしてあの時と同じ気持ちを抱いている。

ほとんど無意識で矢島悠斗を目で追うサナを、複雑な気持ちで見つめながら。


あたしはサナをどうしたいんだろう。

あたしはどうして矢島悠斗と昨日話したことをサナに言えなかったんだろう。

サナへの嫉妬?それとも、矢島悠斗への嫉妬?

矢島悠斗。

ひょろりとしていて、どこか掴みどころのない男の子。

あたしは、矢島悠斗のことをどう思ってるんだろう。

帰り道、後ろから強い風が吹いてあたしの髪を靡かせた。

背中の中程まである長い髪。

同じように長くても、サナとは全然違う髪。

あたしにはもう、必要ない気がした。