美術室を出たあたしは扉を後ろ手に閉めてため息をついた。 いつのまに、あたしはこんなに気を張り詰めていたんだろう。 ――――海の色って何色かな? 矢島悠斗の声が頭にこだまする。 もう、サナが教室に戻っているかもしれない。 あたしは相変わらず静かな廊下に足を踏み出す。 ――――サナなら。 ――――サナなら、矢島悠斗の問いになんと答えただろう。 あたしは、柔らかな笑顔を思いながら歩いた。