「ごめん、気がきかなくて」


矢島悠斗が少しだけ、申し訳なさそうに言った。

あたしは首を横にふって、差し出された掌に自分の掌を重ねた。

少しかたくて、暖かい掌に導かれて、階段を下りきった先には、砂浜ではなく、岩で出来た浅瀬があった。


「わぁ…こんなところが近くにあるなんて、知らなかった」

「さっきの砂浜の向こうに岬が見えてたろう?ここはそこの反対側だよ」


白い波が、荒い音をたてて岩壁を打ち付けている。


「砂浜じゃないからさ、あんまり人が来ないんだ。こっち」


防波堤の影に、ごつごつとした岩が並んでいる。

矢島悠斗は、あたしの手をひいたまま、その岩まで歩いた。