「で、西沢さんはなんでここにいるの?もしかして家こっち?」

「ううん。家は丘のあたりなんだけど、何となく海が見たくなったから」

「歩いてきたの?」

「うん」

「暑いのに」

「これが本当の散歩よ」


あたしは笑う。矢島悠斗も笑った。


「そうか、なら少し時間ある?俺も海に行こうと思ってたんだ」

「そうなの?」

「うん。西沢さんが嫌じゃなければ後ろに乗っけてくよ」

「いいの?」

「嫌じゃなければ」


矢島悠斗はいったんバイクから下り、シートの中からヘルメットをもう一つ取り出した。