「矢島くん」


あたしはバイクの側に駆け寄る。


「なにしてるの?こんなところで」


考えてみれば、今日、矢島悠斗は学校に来ていなかったはずだ。


ドッドッドッ。


低いエンジン音が響く中、矢島悠斗は答えた。


「散歩」

「歩いてないじゃない」


間髪入れずにあたしが言うと矢島悠斗は笑った。


「暑いからさ、歩くのはね」


そう言葉を濁すと、矢島悠斗はあたしの姿を見直して言った。


「なんで制服着てるの?」

「なんでって…今日登校日だったんだよ」

「え、ああ!忘れてた」