「兄ちゃん。俺好きな子がいたんだ」 夏が終わり、夕方の風が乾いたようになる頃、白いベッドの上でジャンプを読みながら寿人が言った。 「え?」 ぼんやりと窓の外の色付く季節を眺めていた俺はマヌケな声を出した。 「知らなかったろ」 寿人はしてやったりとした表情を見せた。 「とは言っても見ず知らずの子なんだけど」 寿人は照れたようにぽつりぽつりと話しはじめた。