カタカタと下駄で歩く音がして振り向くと、浴衣姿の華がいた。レトロな椿柄の可愛らしい浴衣だ。

「どうかな?」

照れくさそうに華が笑う。俺は思わず顔を背けてしまった。やばい、可愛すぎる。普段とは全く違う格好だからいつもより意識してしまう。

「に、似合ってる……」

小声で言ったから周りの雑音に紛れて聞こえないかと思ってた。でも、華の耳にはきちんと届いていたようで、頰を赤く染めている。

「とりあえず、行くぞ」

俺はそう言い、歩き出す。華も慌てて隣に並んだ。しかし、普段から俺の方が歩幅が大きい。今日は下駄のため、華はいつもより歩くのが大変そうだ。まるで雛鳥が親に必死について行くような絵になっている。

「ごめん、ちょっと待って!」

華がそう何度も言うので、恥ずかしいと思いながらも俺は手を差し出した。

「ほら、こうすればいいだろ?」

さりげなく指を絡めて恋人つなぎを作る。華は普段と違う手のつなぎ方に顔を赤くしてるけど、この方がいい。だってこうすれば、さっきから華をジロジロ見ていた男どもの目が諦めたものに変わっていくから。