「アップルパイって、確か国によって形や味が様々なんだよね」

百合がそう言い、僕は「そうなの?」とまたアップルパイを口にしながら言う。うん、本当においしい。

「オーストリアでは、パイ生地がロールケーキみたいに巻かれていて、名前がアプシェルシュトゥルーゲルって言うんだよ」

「何そのRPGの必殺技みたいな名前!」

「しょうがないでしょ。ドイツ語なんだから発音がゴッツイの!」

しばらく二人でアプシェルシュトゥルーゲルを連呼しては笑い合った。そして、イタリア語ではなんで言うんだ?フランスでは?という疑問からスマホで調べてみる。

フランス語ではショーソン・オ・ポム。イタリア語ではトルタ・ディ・メーレと言うらしい。

「イタリア語が一番おしゃれな気がする」

「トルタって言い方、可愛いよね」

そう言いながら、またアップルパイを口に入れる。あったかくて、とてもおいしい。何度だって食べたくなる味だ。