「ショートケーキとモンブランを一つずつ!」

「プリンとタルトとパンナコッタで」

「チョコレートケーキが二つとチーズケーキを四つください」

次々においしそうなケーキはショーケースから出され、誰かの手に渡っていく。きっと誰かを笑顔にするんだろうな。

そんなことを考えていたら、残ったケーキはわずかとなってしまった。とりあえず、無難にショートケーキにしようかな。ちょうど二つだけだし。

そう思い、僕が「すみません。ショートケーキを二つください」と店員さんに声をかけると、「あっ……」と背後から小さな声が聞こえた。

振り向くと、小学校低学年と見られる女の子が可愛らしいキティちゃんの財布を手に僕を見ていた。僕は女の子に目線を合わせる。

「もしかして、ショートケーキ買おうとしてた?」

女の子は泣きそうになりながらコクリと頷く。

「今日ね、ママと桜のお誕生日なの……」

女の子はお小遣いを貯めて、サプライズでケーキを買いに来たんだろう。僕は微笑み、店員さんに言った。