「なんだか暑くなってきたね」

「あーぁ、夏は夏期講習。受験生は辛いよ」
いつもの公園のベンチで、ショコラ・デ・ココのチーズケーキにフォークを刺す華。

春学に進学したばかりでのんびりしている拓馬とは対称的に、三年生になった彼女は受験勉強に追われている。

「僕も去年は散々つき合ってもらったからね。教えるのは無理だけど、一緒に勉強しよ」
慰めるように拓馬が言って、もうひとつのチーズケーキを手で掴んでかぶりつく。

「「やっぱ美味しいよねー」」
二人の声が重なった。

「あのね、拓馬くん」
華がフォークを置いて、まっすぐに拓馬に向き直った。

「えっ……どうしたの?」
真剣な目に拓馬は驚いて、食べかけのケーキを箱にしまった。

「私ね、第一志望はK大だよ」

「え?でも、華ちゃん前からY女子大行きたいって言ってなかった?」と拓馬。