「私にとっては海斗と二人の未来より、お父さんとお母さんの幸せの方が大切だって。海斗を好きだと思ってた気持ちは、幼なじみとして、兄弟みたいな、家族への愛情だったんだって。

だから、海斗に言っちゃったの。
……私の一番は海斗じゃなかったって。

それからあいつは、再婚を認める代わりに一人暮らしを始めて、私とは会ってくれなくなった。
当然だよね。嫌われたって当然……」

うつ向いたまま何かを吐き出すように喋る華を見ながら、拓馬は黙って聞いていた。

華も拓馬に何と言って欲しいのかわからなかったから、そんな彼にほっとしていた――。


しばらくして、華が口を開いた。
「ありがと。拓馬くん」

「ん、食べよっか」

「うん」
赤い目のまま、華がシュークリームを頬張る。

その表情は、晴れやかだった。
ずっと胸に溜めてきた思いを打ち明けたから。

「拓馬くんって、年下なのに、お兄ちゃんみたいだね……」
華は呟いた。