春学恋愛部

「はい、カフェオレと、シュークリーム」
ビニール袋を華に手渡し、桜の下のベンチに腰かける。

ウサギの目になった彼女は、「ごめんね」と受け取った。
有名店のロールケーキがコンビニのシュークリームになっちゃったごめんねと、涙を見せてごめんね。

拓馬は柔らかく微笑んで桜を見上げたまま言った。

「僕ね、女の子に話しやすいねって相談されることが多いんだ。華ちゃんも、話してみる?」

無理に聞き出そうとはしない拓馬の様子に、華の胸の中には安心が広がる。

家族の話になると言葉を濁す彼女に、この一年間拓馬は気付いていながら知らないふりをしてきた。
きっと話辛いことなのだろう、と思っていたから。

「私ね、嘘つきなんだ。だからあいつに嫌われちゃった」
自嘲ぎみに笑って華は語り出した。

ずっと、誰にも話したことの無かったことを。