「ぼ、僕に振らないでよ~」
大好きなチョコレートケーキにフォークを刺して、知らん顔を決め込もうとしていた拓馬が慌てた声を出した。

「拓馬くんはどうなの? 彼女と、した?」と真顔の柚果。

「したの?」と興味津々な瞳の鈴花。

「……女の子って、本当人の恋バナが好きなんだから……。僕のことはいいでしょ。
それより男としての意見だけど、手を出さないにも色々あるんじゃない?
その気にならない、もあるかもだけど、本当に好きになった子は大切にしたい、とかさ。
僕には海原先輩の気持ちはわかんないけど、柚果ちゃんはいっつも、ネガティブにばっか考えないの!」

早口で捲し立ててチョコレートケーキをほうばる拓馬。

「おいしー」とうっとりした声を出す姿は頬袋に餌を溜めるハムスターみたいで、近くの席の女の子が「あの子可愛いね」とヒソヒソ話を始める。

「そうだね、拓馬くん。鈴花も、変なこと聞いてごめんね……」

ダイエットに協力してくれたお礼を兼ねて、ずっと我慢してきたケーキを食べようと集まったのにこんなんじゃ駄目だな、と柚果は思い直す。