突然海斗が起き上がって、柚果に背を向けた。
ソファーの足元に腰かけたまま、柚果から目を逸らす。

「どうして……?」

不安に揺れる瞳、困惑した表情で海斗の背中を見つめる柚果。

スプリングの音が響いて、海斗が立ち上がった。

「だって今日、体育祭だぜ?汗まみれ砂まみれで……お前初めてだし、そんな急がなくてもいいんじゃねーの。それより、腹減ったし飯でも食いに行く?
あれ食ってもいいけど……。お手伝いさん、料理上手いんだぜ」

何かをごまかすような態度に海斗らしくないな、と思うけれども、自分から迫っておいて断られた恥ずかしさもあって、柚果は頷いた。

「あ……うん、じゃあ、外行こうよ」

「だな、じゃ、行こうぜ」

気まずい思いを打ち消すように、海斗は明るい声を出した。