春学恋愛部

「ロミオとジュリエットに出場の方は、コース前に集合して下さい」とアナウンスが流れる。

「柚果、頑張ってきてよー」クラスの皆に送り出されて柚果がコース前に行くと……。

揃っていたのは小柄な女の子ばかりだった。
ロミオとジュリエットは、男女が反対から同時にスタートし、出会ったら男の子が女の子をお姫様抱っこしてゴールまで走るという競技だ。

カップルの相手は誰でもいいので、女の子はクラスで一番軽い、と思われる子ばかり。
柚果は私みたいな重い子、絶対合流地点で残されて恥をかくんだ、と今さらながら泣きたくなる。

「ヨーイ、スタート!」
号令がかかるが、柚果はゆっくりと走り出した。

最後に着けば、一番遅い男子が仕方なく抱っこしてくれるはず。
余って笑われるよりはマシだよ……と思いながら。

合流地点には、一番の男子が到着する。
続いて女子が到着したが、男子は動かなかった。二番目の女子が到着しても、彼は動かない。

何やってんだろ、あの人…?
ってか、海斗!?
柚果は目を見開いた。

「早く来いよ、バーカ!」
わ、私に向かって叫んでる……。
海斗のクラス、一位争いしてるのにビリになったらヤバいよね……。

柚果は大慌てでスピードを上げ、3番で合流地点に到着した。
ふわり……。

海斗が軽々と柚果を抱き上げ、ゴールに向かって走り出した。
一組抜かして……。

「海斗、抜かせー!!あいつ1組だぞー!!」

声援が沸き起こる。1組は、海斗のクラスと一位争いをしているクラスだ。

「お前、しっかり捕まってろよ」

海斗はスピードを上げて、一位のカップルに並んだ。
……ゴール!