ピーンポーン

「はーい」
柚果がインターホンをとると「宅急便でーす」
届いた荷物は、柚果宛てだった。

海原先輩からだ!

待ちに待った海斗からの贈り物に、柚果の心は跳ねる。
開けてみると……グリーンのワンピースが入っていた。ハイウエストのバルーンスカート。
センスが良くて、海斗らしさが出ていた。 

柚果は嬉しくなって鏡の前に立つ。

が…入らない。

背中のファスナーが、半分しか上がらない。
息を止めても、お腹を引っ込めても無理だった。

でも、まぁ、お礼だけ言って、もっと痩せてから着ればいいんだよね。
そう思った時、柚果は包みの裏にあるメッセージカードに気づいた。

『空港に着て来い』

もし着て行かなかったら、口もきいてもらえないに違いない。
せっかく先輩が、自分の為に選んだワンピースなのに。

そう思った柚果は急いでジャージに着替えると、玄関を飛び出した。
もう、お菓子の缶のことなんて全く興味がなくなっていた。


柚果は河川敷を走るのが好きだ。
自分では、海斗の事を思い出せるからだと思っている。

初めて海斗と一緒に帰った時、運動は苦手なのに走ってばっかりだ、と思った。
柚果は今も、海斗に少しでも近付きたくて走り続けている。