正樹の手が緊張で震えていて、つないだ手から鈴花に伝わる。
付き合うようになってから柚果も誘って、鈴花は何度もバスケの試合を見に行った。

攻めるのが得意で得点王も取るくらいの正樹だけれど、恋愛に関しては消極的だ。

この言葉が精一杯なことは、十二分に鈴花には伝わっている。

「うん」
普段はおしゃべりな鈴花が素っ気ない返事をしたけれど、正樹だって分かっている。
それが彼女の照れ隠しだってことを。

薄暗い小さな公園のベンチには、他には誰もいない。

正樹の腕が鈴花の肩に回って、鈴花はゆっくりと顔を上げた。

まっすぐに自分を見つめる正樹と目が合って、心臓の音が早くなるのを感じながら目を閉じる。

二人の唇が重なった――。

触れるだけの優しいキスはぎこちなくて、不器用な正樹らしい。

二人はこれからも、ゆっくりと時間をかけて進んでいく。