「まーた、ニヤけてる」
「ほんと、のろけちゃって」
鈴花と華は呆れ顔だ。

「お待たせしました」という声と共に並べられたケーキに、首を振って頭から海斗を追い出しフォークを手にする柚果。
「あー、美味しいー」

「でも柚果ちゃん、ホントにそんなに食べていいの?この後パーティーの衣装選びだよ」
いたずらっぽく猫目を瞬かせて華が笑う。

「う……帰り走ろっかな……」
呟く柚果だが、決してフォークは離そうとはしない。
海斗からケーキのお許しが出るなんてことは滅多にないのだから、当然といえば当然だ。

「ねぇ、華ちゃん、本当に私も行ってもいいのかな?」
カップを置いて鈴花がためらいがちに口を開く。

実はクリスマスパーティには正樹と鈴花も招待されている。
海斗と正樹は去年同じクラスで話くらいはするものの、それほど仲が良いわけでもない。

「いいのいいの。院長の息子からの直々招待なんだから」と華が明るい声で答えた。

「海斗がクリスマスパーティに出席するなんて何年ぶりって感じだからさ、お父さん喜んでるんだ。だからきっと1時間くらいは私たちは挨拶回り。
海斗ってば、その間柚果ちゃんを拓馬君と二人にしたくないんだよ。
ふふっ、ホントに独占欲強いよね」

白い歯を見せて柚果の顔を覗き込む華に、柚果は動揺を隠せない。