華と拓馬が大きく目を見開いて、華が唇を噛みしめた後、涙声で言った。
「……海斗、ありがとう。柚果ちゃん、ありがとう」

目と目で会話する3人に、全くついていけていないのは柚果だった。
華のありがとうの意味もわからず、呆然と立ち尽くしている。

声も出せずにいる柚果の肩を抱き寄せたまま、海斗が踵を返し「いくぞ」と耳打ちする。
思わず頬を染めた柚果は促されるままに歩き出した。

背中で拓馬の「先輩、僕の大事な友達のこと、よろしくね」という声と、「お前は姉貴のことだけ考えてればいーんだよ」という海斗の声を聞きながら。