ここにいる人たち全員、わたしには誰だかわからなかった。

そこからのことはあまり覚えていない。
そこまでのこともあまり覚えていなかったけど。
今はとにかく、目の前に広がる太陽の光が眩しい。

わたしが七瀬という名前なのかどうかすら、ぼんやりとしか覚えていなかった。
怪訝そうな顔をする看護師さんに連れられ、いろんなお医者さんと顔を合わせ、あらゆる検査をしてもらった。

あまり話もきいてなかったけど、とりあえず記憶喪失であることだけは自分のなかで理解できた。
なぜ、わたしは病院にいるのか。
周りにいた人は誰だったのか。
わたしの身になにが起きたのか、今までどんな生活を送っていたのかも思い出せなかった。