「……え」



驚いて肩の力を抜く凛。



「あなた、いい眼をしてるわ。
据わった生意気そうな目をしてるのに光を損なってないなんて、うちの誰かさんとそっくりね」



お母さんの目の先は、志勇。


生意気そうって、単に子供なだけなんだけどね。



「……壱華」


あ、変なこと考えてるのバレた。


「ふふっ……」


腕を組んで口をへの字にする志勇に笑って誤魔化す。



「凛太朗、こちらに来なさい」



そんな中お母さんはハリのある声で凛を呼ぶ。


呼ばれた小さな体は素早く彼女の指定した位置に腰を下ろした。




「元々家業がヤクザなら、この世界がどれだけ厳しいか分かっているはずよね。
それを踏まえて荒瀬で生きる道を選ぶの?」

「はい」

「そう、ならば存分に生きなさい。運命は自分で切り開いていくものよ」




わたしが同じような言葉を凛にかけたけど、姐の言葉はやはり別格で。


慈悲深い彼女の言葉には少年の心を震わせるものが確かにあった。



「ありがとうございます」



それを受け瞳を揺らして深々と礼をする凛。


そうして姐さんに認められた彼は、剛さんに連れられて部屋を出た。