その人が部屋に来ないときは、時計と汚いソファーしか置かれていない殺風景な部屋で無心に過ごした。
無心に、といってもなり切れるはずがない。
無意識の内に過去という暗闇に飲まれてしまうこともあった。
俺は神木会の次男として産まれた。
生活には特に不自由なく育った。
家が極道だということを除けばごく普通の家庭だった。
無口だけど愛情深い父親がいて、朗らかで底抜け明るい母親がいて、優しくて頼りがいのある兄がいる。
こんな家族を俺は好きだった。
極道の世界がどんなに過酷なものかも身に染みて分かっている。
それでも俺はこの世界で生きるつもりでいた。
『シンデレラ』が現れるまでは。
無心に、といってもなり切れるはずがない。
無意識の内に過去という暗闇に飲まれてしまうこともあった。
俺は神木会の次男として産まれた。
生活には特に不自由なく育った。
家が極道だということを除けばごく普通の家庭だった。
無口だけど愛情深い父親がいて、朗らかで底抜け明るい母親がいて、優しくて頼りがいのある兄がいる。
こんな家族を俺は好きだった。
極道の世界がどんなに過酷なものかも身に染みて分かっている。
それでも俺はこの世界で生きるつもりでいた。
『シンデレラ』が現れるまでは。



