続・闇色のシンデレラ

その女が様子を見に来たのはただの気まぐれだと思った。


しかしそいつは俺を軟禁する部屋に毎日通った。



「凛、起きて。いい天気だよ」



いつしか親しみを込めてか、俺は「凛」と呼ばれていた。


それは兄貴に呼ばれていたあだ名だった。


優しかった兄貴、自慢だった俺の兄弟。


けど『シンデレラ』なんて呼ばれる女のせいで灰になった。


だから目の前にいる女を死ぬほど憎まなけりゃいけないはずなのに。




「凛、甘いものは好き?」

「……え?」

「ケーキ作ったんだけどね、志勇そんなに甘いもの得意じゃなくて、余っちゃったの。
でも組員さんにあげようとしたらだめっていうから。
わたしが食べたことにして、こっそりもらってくれない?」

「あ、はい」

「ほんと?ありがとう」




どうして心から恨むことができないんだろう。


シンデレラなんて、荒瀬の若頭に気に入られたのをいいことに、自分勝手なことをする女だと思っていたのに。


無償で世話を焼いてくれるこの人に、俺はいつも逆らえずにいた。